第2話

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これは夏樹にとっても想定外だった。 こんな雨の中、出てこないということは相当怒っているということだ。 今までにミスを出したことはあったのだろうか。 どうしても今日謝って許してもらえなければ、ニンニク講座はお手上げだ。 内田にもどうごまかすことが出来るだろう。 もう一度チャイムを鳴らし、応答がないことにますます心臓が高鳴ってくる。 「先生ー、地域情報誌でコラムをお願いしている編集から来ました。原稿にミスがあってお詫びに伺いました。いらっしゃいますか」 奥で、物音はしているようだが、一向に出てくる気配はない。 雨脚はますます増してきて、空は一気に暗闇に包まれていく。 遠くで雷が鳴り始め、一瞬雲間に光が走る。 足元に震えが走ると同時に、恐怖で喉元にすっぱいものがこみ上げる。 車の中で待ってしまうと、出てきた時に失礼だろう。 だが、雷は大の苦手だ。 扉を軽く、こぶしで叩いてみる。 「先生、すみません」 風が出てきた。頬に小さな雨粒が飛び、ストッキングが濡れて湿っていくのが分かる。 それでも、ここを離れる度胸はない。いつもそうだ。 夏樹が動けないのも、意見を言えないのも、度胸がないのだ。
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