第2話

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「ひいい」 とうとう雷鳴が轟き、夏樹は身をすくめた。 髪までが雨に曝され濡れて頬にはりつく。 恐怖に打ちひしがれて、とうとう車に戻ろうと振り返った時だった。 門を勢いよく開けて戻ってきた男は、背中に大人一人は入ろうかという麻袋を背負った初老の男だった。 髪は脳天にはりつき、髭も雨でしょぼくれている。 長靴をはいて、ぐっしょりと濡れた衣服を着た男は、どぶねずみのようだった。 「何をしている!こんな雨の中。おい、正志!あいつ何をしている」 雷に負けない音量で男は叫ぶと、走ってくるとすぐにポケットをまさぐる。 服からぼたぼたと垂れる滴で、男がどれほど濡れているのか分かる。 「先生、このたびは原稿にミスがあって申し訳ありませんでした。お詫びにこれを」 夏樹が胸にかかえていた菓子折を雨の中差し出すと、一瞬男の動きが止まった。 東だと思い込んだが違ったのかと思ったが、男は目を丸くして視線を菓子折に落とす。 「なんだそれ。早く入れ。風邪をひくぞ」 そういうと、鍵を開けて一人家の中に入っていく。そして聞えるどなり声。 「まさしー!何をしているんだ。いい加減にしろ!」
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