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通された部屋は、暖かく整えられた居間だった。
作家といえば本ばかりの部屋を想像していたが、ここにはそんなものはかけらもない。
書斎が別にあるのだろう。
渡されたタオルで髪の毛を軽く拭きながら、夏樹は台所でコーヒーを入れる男の後ろ姿を眺めた。
天井に突きそうなほどの長身だが、線が細い。
胸まで伸びた髪の毛を、一つに束ねているのを見ると女性的だが、手足の筋肉が綺麗に浮き出ている。
「ごめんね。俺、陶芸の仕事をしていて、奥で音楽をかけながらやっていたんだ。平日は誰もこないからイヤホンつけてて、気付かなかったんだよね。寒かったでしょう」
「あ、大丈夫です。身体は丈夫なんです」
慌てて正志に言うと、コーヒーをいれた男はお盆を持って近づいてくる。
クスリと笑うと頬にできるえくぼが憎たらしいほど可愛らしい。
とくり、と心臓が高鳴る。
「大体、なんだ。あの梅木という男。今まで謝りに来た事なんてなかったぞ」
「そうみたいですね。すみませんでした」
「いや。君がどうこうじゃなくて」
居間に通され、再度東に話をすると、食い違う点が出てきた。
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