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内田に電話をして確認すると、梅木が東のところに謝罪に訪れたことになっているのは六回。
すべて経費が使われていた。
おそらく、すでに梅木の所にも連絡がいっていることだろう。
「あんたのところの社長とは、小学校の同級生でな」
いつの間にか夏樹の正面に座り、正志が横目でにらむのも気にせず、お盆の上から残りのコーヒーを取って口に運ぶ東。
「え、そうなんですか!」
驚いた声に、嬉しそうに目を細める東。まゆげと鼻の下の髭と顎髭で、一歩間違えれば顔じゅう毛むくじゃらだ。
「そうさ。だからコラムも情けで書いてあげているわけだしな。別にだから菓子折なんぞいらん。あいつは小学校の時から俺のあとをついて周っていてなぁ、あきちゃん、あきちゃんって」
研修で出社したときでしかほとんど会わない社長は恰幅がよく、笑ったところなどみたことがない。
いつもというより、ほとんど社長室を覗いても新聞で顔を隠されているのだ。
「そんな話をしたってつまらないだろう。それより、陶芸に興味ない?」
正志が東の話を遮るようにして夏樹に笑いかける。
今までインタビューで何人にも陶芸作家に会ってきたが、なぜそこまでのめり込めるのか疑問だった。
が、夏樹はその時、迷うことなく頷いていた。
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