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「もう大分手慣れてきたね」
集中していた時、急に背後から声をかけられ、夏樹は電動ろくろを踏む足を止めた。
瞬間に手がゆがみ、湯呑のへりがぐにゃりと曲がる。
「あぁ!ごめんごめん。話しかけない方が良かったね」
といいつつ、正志はどこか楽しんでいる風にも見える。
「もう、せっかくあとはなめし皮をやろうとしていたのに。またやり直そうっと」
成形していたものを手で押しつぶすようにして、形を壊す。丸めてから袋に戻す。
あの雨の夜、正志に陶芸を誘われてから、やるようになった。
初めは興味などなく、正志の笑顔につい頷いただけだった。
しかし、初めてはまってしまったのはうそではない。今では、東の原稿を取りに来るのが楽しみになった。
梅木からはその後、横領していた小額の金を回収もできた。自分の小遣いとしてパチンコで使ってしまったというのだから驚きだ。
だが、ニンニク講座も無事成功したおかげで、(講座の中で、いかに夏樹が数日前に玄関の前で恐怖の顔を浮かべ、ドアにはりついていたかを東が披露し、大受けしたことも一因になっただろう)夏樹は、東専属の係りになってしまった。
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