第2話

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というのも、東が話した内容に一番受けたのは、社長だったらしいのだが。 結局、原稿は夏樹が受け取りにくるようになった。 「多分、そろそろ原稿ができたと思うので、今日はこれくらいにしておきます。また来週」 夏樹は、作品を作ることにこだわっているわけではない。 手のひらで土をこね、水をつけ、またこねる。 どうということのない作業だが、ひたっと伝う土の冷たさが心地よく、ろくろを回していると、悩みも迷いもすべてがなくなる感覚を味わえるのだ好きなのだ。 「いつでもどうぞ」 正志は、ぺこりと頭を下げると、夏樹が帰ることを責めようともせず、また作品を早く作れともいわない。 彼も、永遠とろくろを回す時が、あるのだろうか。 鞄をとって、彼を振り返ったが、正志はすでに釉薬の入った瓶を見つめていた。 話しかけるのを止め、小屋のドアをそっと引いた。 案の定、原稿はすでに出来ていた。東は陶芸をしている夏樹を気遣って、縁側に置いていってくれたようだ。 「ご苦労様です」 原稿を手に取り、ふと声のしたほうへ顔を向けると、女が一人立っていた。 「あ、こんにちは」 グレーのシックなワンピースに身を包んだ女性は、畑と小屋のあるこの場所にはとても不似合いだ。
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