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「そうそう。ちょっと昼寝してた。来月なんだけどさ、もし休みが取れるなら石田桃のライブ一緒に行かない?」
心地よい、ゆったりとした話し方は、一緒にご飯を食べていても音楽のように流れる。
ついつい自分のことばかり話してしまいがちな夏樹だが、遊びに行く提案をいつもしてくれる小島をありがたく思っていた。
「来月かぁ。連休明けだと休めないかもしれないけれど、確認してみるよ」
「おー、お願い。すごく興奮してお勧めだよ」
「うん、だんだんその感じが分かってきたよ。あ、チャイム鳴っているんじゃない?」
電話の向こうで、昼休みの終了を迎えるだろうチャイムが鳴っている。
「本当だね。ごめんね、急に」
「汗、かいた?」
「うん。肘の辺りとか半端ないね」
小島の返答に声を上げて笑うと、数分前に感じていた何ともいえない屈辱感がすっと消えていくようだった。
小島は、昼休みに時々椅子に座って昼寝をすると言っていた。
そうすると、起きた時に肘や脇に大汗をかいてしまうと悩んでいたのだ。
それさえも可愛らしく感じてしまうのだから、どうしようもない。
電話を切りたくない思いが強くなるのを抑えながら、キーを回してエンジンをかける。
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