第2話

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「あ、今外だったんだ?」 「うん。東先生の原稿を取りに来たの」 「いいね。俺、あのコラム好き。じゃあ陶芸もやったんだ」 「二時間も土をこねていたよ。今度おいでよ、楽しいから」 「ぜひ行きたいよー」 間延びした話し方は心地良く、いつまでも続けていたくなる。 「あ、はい」 が、突然小島が小さい声で返事をしたかと思うと、すぐに仕事口調に戻る。 「ごめん、行かなくちゃ。またメールするね」 というと、夏樹の返事を聞くこともなく通話が遮断された。 優しいと思えば、そっけない。 それでも心が軽くなったのは事実だった。 だが、疑問も残っている。彼とほとんど毎日連絡を取り合うようになって一カ月が過ぎた。 お互いに、おかしいと思うようなところも、諍いもない。 そして、お互いに好意を持っていることは連絡のとり方や、こんな些細な電話からも明らかだ。 だが、明確な言葉は存在しない。 結婚までいかなくとも、付き合っているのかさえ分からない。 恋愛なんて五年はしていなかった。 恋愛のはじめ方さえ忘れてしまったのに、恋愛が始まろうとしていることは感じていた。 だが、始まりは終わり。踏み出す勇気は出せないまま、夏樹は次の取材場所へ向けてアクセルを踏んだ。
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