第2話

18/30
前へ
/206ページ
次へ
※ 恋愛においてのTPOは、すべてのTPOに通じる道だ。 夏樹はジーンズに足を通して、駅までの道を走った。 まだ朝は八時過ぎ。休日にこんな早くから出掛けるのは、彼にイチゴ狩りに誘われたからである。 待ち合わせた電車に乗り込むと、車両の一番先頭に小島が立っているのが目に入る。 房総へ下る電車はすいていると思ったが、季節的にも花が満開だからか、空いている座席は少ししかない。 「おはよ」 彼の隣に立ち、そっと声をかけると、一瞬驚いたような顔を見せたあと、ほほ笑んで言う。 「おはようございます」 お互いに軽くお辞儀をして、再びほほ笑む。 並んで座れる席まで行くと、夏樹に壁側へ座るように促した。 「ありがとう。眼鏡をかけると印象が変わるね」 今日の小島は、黒縁めがねをかけていた。半年前にレーシックをしたという彼の視力は1,0だったが、夏樹は男のひとが黒縁の眼鏡をかけるのが好きだと話したら、小島が持っているというのでかけてきてもらったのだ。 「そうかな。久しぶりだから懐かしいな。それにしても、出かけるときはいつも雨だね」 苦笑い混じりに小島が言う。
/206ページ

最初のコメントを投稿しよう!

8人が本棚に入れています
本棚に追加