第2話

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特に農園に行く看板もなく、人も歩いていない。 駅でさえ無人なのだから、とりあえずは地図に従って歩くしかないだろう。 携帯を片手に左右を確かめながら歩くこと十分。 しかし、一向に農園らしきものは見えてこない。 「もう少しかな」 小島の言葉に頷きながら歩き続けること、また二十分。 周りは田んぼと林に囲まれた道で、農家らしき家があるものの人気はない。 通り過ぎる人もおらず、道を間違えたのかと不安に駆られてきた。 「知ってる?」 「何を?」 ふいにかけられた言葉に、携帯で道を検索していたのを顔を上げる。 画面が濡れてしまうので、一度ジーパンのポケットに突っ込んだ。 「電柱とか電線って虫や鳥が止まっているじゃん」 「うん」 「でも、電線とか噛んだりされると、障害が出るでしょ。だからね、あそこには虫とかが嫌いな臭いのある薬みたいのを塗ってあるんだって」 「へー!」 「へー、でしょ?」 「うん。へー!知らなかった」 歩き続けることに必死になり、雨脚が弱まっているが、傘をさし続けていたことにも気付かなかった。 「すごい。豆知識。雨もやんできたね」
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