8人が本棚に入れています
本棚に追加
「本当だね」
つられるように返事をしたが、夏樹は向こうから手をつないでくれないかと思い、自然と小島に身を寄せるようにして近づいた。
「すごい。待つかな。急ごうよ」
まるでそれが分かっていたかのように、小島がすっと先に出て、駆け足を数歩してから振り返る。
その楽しそうな顔を見て、夏樹は小さくため息をついたあと、笑顔を作って頷いた。
「行こう」
イチゴのあるハウスは三つに分かれていて、時間制限があるものの、周りはすごく早いようだった。
受付で名前を記入すると、番号を渡されて待つように指示されたが、その間に棚に飾られている土産のお菓子を眺めた。
コーヒーも売っていたが、お腹になにかいれるのは控えようと、雨でぬれた震える体を抑えて我慢した。
十分ほどで番号が呼ばれると、小島と顔を見合わせて笑いあう。
「お腹壊すほど食べよう」
そう言って笑う小島の顔を見ている頃には、夏樹の頭もイチゴでいっぱいになっていた。
ハウスに入ってみれば、その思いはさらに大きくなった。
8列ほどのレーンにイチゴが並び、風鈴のようにイチゴが垂れているのが見える。
最初のコメントを投稿しよう!