第2話

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「本当だね」 つられるように返事をしたが、夏樹は向こうから手をつないでくれないかと思い、自然と小島に身を寄せるようにして近づいた。 「すごい。待つかな。急ごうよ」 まるでそれが分かっていたかのように、小島がすっと先に出て、駆け足を数歩してから振り返る。 その楽しそうな顔を見て、夏樹は小さくため息をついたあと、笑顔を作って頷いた。 「行こう」 イチゴのあるハウスは三つに分かれていて、時間制限があるものの、周りはすごく早いようだった。 受付で名前を記入すると、番号を渡されて待つように指示されたが、その間に棚に飾られている土産のお菓子を眺めた。 コーヒーも売っていたが、お腹になにかいれるのは控えようと、雨でぬれた震える体を抑えて我慢した。 十分ほどで番号が呼ばれると、小島と顔を見合わせて笑いあう。 「お腹壊すほど食べよう」 そう言って笑う小島の顔を見ている頃には、夏樹の頭もイチゴでいっぱいになっていた。 ハウスに入ってみれば、その思いはさらに大きくなった。 8列ほどのレーンにイチゴが並び、風鈴のようにイチゴが垂れているのが見える。
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