第2話

28/30
前へ
/206ページ
次へ
「これね、部屋の画像。ポスターはないんだけど、壁にこういうの張って飾るのが好きなんだよね」 ある程度続けて数曲お互いが歌い終えると、小島が携帯を差し出してきた。 覗き込むと、数枚の絵が壁に貼られているようだ。 「なにこれ。描いたの?絵の具?」 うん、と答える小島の声もあまり耳に入らなかった。並べられたそれらは、写真のように色鮮やかでかつ美しかったのだ。 だが、絵だというのはすぐに分かる。 石田桃の横顔だというのも、ぼんやりと感じたが、実際にここまでのファンだとは思わなかったので、驚いて顔を上げる。 「気持ち悪いでしょうー」 「すごい!うまいね」 自嘲気味に笑う小島と、夏樹の声が重なった。 「すごい。私美術の成績はすごく悪かったから、こんなにうまく描けるなんてすごいよ。周りの風景がみたいのも写真みたいだし、これ趣味で終わらせるのなんてもったいないよ」 「あ、隣と上のは写真ですねー」 「え」 直後、二人は顔を見合わせて思い切り笑った。 「やっぱり?うますぎると思ったんだよね。新聞を切り抜くのも好きだって言っていたもんね」
/206ページ

最初のコメントを投稿しよう!

8人が本棚に入れています
本棚に追加