第2話

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「いいと思います」 幸せだな、そう思ったのは隠しておこうと思った。しばらくは自分の胸の内にとどめておこう。 「では、ここから駅前の階段の下まで手をつながない?」 今度は噴き出す。 「聞かなくていいってば」 「はい」 と、差し出された手に自分の手を乗せる。 ぎゅ、と握られる感覚は守られているようでくすぐったい。 が、 「はい、おーわり」 「なにそれ!」 階段までと言われていた、しかしその距離数十メートル。 「誰かに見られちゃうかも」 小島の働く会社は近くにある。確かに、この辺りに住んでいる人間はたくさんいるだろう。 それでも、もう20後半になる男がそんなことを気にするなんて、どれだけシャイなのだ。 そして、恋愛初心者なのだ。 だが、彼に経験がないことは知っている。夏樹はその突っ込みを心の中にとどめて、頬を膨らませるだけにとどめた。 「つまんない」 「また今度ね」 惚れたものが負けだというのなら、完全に敗北だ。 にやりと笑った小島の横顔を眺めながら、夏樹はそれでも確かにこの手に掴んだ幸せに今は満足していた。 こうして二人は始まった。すぐに終わりを迎えるなんて、想像もしていなかったのだ。
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