第三話

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まだ肌寒さの残る三月の初め。 夏樹は晴れ晴れとした気分で、高校時代からの友達の結婚式に参列していた。 部活の仲間である光は、おっとりとしていたが、進学や就職の際にはいつも真っ先に内定を出す、しっかり者だった。 堅実というべき性格は、結婚という形にも如実に表れる。 大手メガバンクで事務職をし、大手IT会社の彼氏と3年付き合い、一流ホテルで結婚式を挙げる。 その晴れの舞台に集ったメンバーは、経済状態はそれぞれであっても、そこそこ幸せに夏樹には見えた。 七人集ったなかで、すでに結婚しているのが5人、一人を覗いてみんな子持ち。一人はすでに二人目がお腹の中にいる。 「あとはうちらだけだねー。なつき」 智子が夏樹に肩をくんだ。すでに配られたウェルカムシャンパンで酔っているようだ。 スピーチをするから緊張すると騒いでいたが、おそらく酒の力を借りて乗り切るつもりだろう。 智子はバレー部の部長でもあったが、一方で精神的に打たれ弱い部分もあり、彼氏は常にかかさないのだが、なかなか結婚には結びつかないようだ。 「でもね、私も彼氏できたんだ」 「え!」 唯一彼氏がいなかった夏樹だが、その報告に酔っぱらった智子が叫んだ。 「ね、なつきに彼氏ができたって!」
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