第三話

4/21
前へ
/206ページ
次へ
幸は、私たちグループの中で一番早く結婚した。できちゃった結婚をした彼女は、高校生の頃からグループ内ではませていた。 特別結婚した時に驚きはなく、やっぱりね、というのが正直な感想だった。 恋愛に敏感なものから結婚していくのは世の常のようで、いまいち積極的になれなかった夏樹は、みんなが落ち着いた頃になってようやく芽が出てきた。 「でもさぁ、この中でやっぱり一番幸せなのは、良子だよねー」 幸が、ホテルスタッフにワインをついでもらいながら夏樹に言う。 円卓になってはいるが、どうしても会話は全員でするより、隣同士に偏りがちだ。 音楽もかかっているし、なにより披露宴が始まるまではあちこちで会話が止まらない。 だが、幸が夏樹の隣に座る良子に聞えない声の大きさではなかった。 「旦那は弁護士でしょ。聞いた?旦那もこのホテルに来ていて、今夜はここに泊るらしいよ」 「嘘」 隣の良子を思わず見ると、右隣と話しているが、その頬は幾分緊張しているかに見える。 同い年の弁護士と彼女が席を入れたのは一年半前。その間に結婚式をして、子どもまで一人儲けた。 一軒家ほどのスペースがあるマンションを手に入れ、実家は歩いて数分の距離。
/206ページ

最初のコメントを投稿しよう!

8人が本棚に入れています
本棚に追加