第三話

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時には、夏樹の取材が午前中で終えた時、お昼を食べて銭湯に行くこともある。 二人とも休みの時は、少し遠出をして日帰りの温泉にも行く。 遊園地や動物園に行くことはなくても、同じ趣味を生かせていれば、気持ちが穏やかで楽しいことに変わりはない。 「でもさ、温泉って男女別でしょ?一人で入るの?」 「そうだよ」 えー、という声が上がる。もちろん、夏樹も初めはそうだったが、銭湯など行く経験がなかったからそう思うだけで、案外中に入れば一人で来る人も多く、楽しめるのだ。 意外に気に入っているデートスポットだけに、二人で開拓しようと最近は息巻いている。 「彼氏、どんな人なの?エッチうまい?」 テーブルの端から智子が言う。 スピーチも無事に終えたことで、テンションはウナギ登りだ。 周りがたしなめるように智子の肩をつつき、周囲を見回すが、ありがたいことに誰も聞いていないようだ。 「すっごい淡白。あんまり女性経験ないらしいんだよね。恥ずかしがり。でも、すごい優しいよ」 智子が顔を覆う。 「淡白かぁー!」 昔から、智子はみんなの恋愛事情、特に性的方面において事細かく聞きたがる。 自分のことも濃厚に伝えてくれるので、周囲もその性格を受け入れているのだが、正直恋人同士の関係は誰もがどこまで本当か分からない。 結婚してすでに出産を終えた子は、一様にセックスレスだと話すが、本当は濃厚な夜を過ごしているかもしれない。
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