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逆に、いくら円満をアピールしていたとしても、別れる時など一瞬だ。
大人の事情をひとつずつ受け入れていくたびに、幸せに憧れる細胞が壊死していく感覚に襲われるのは気のせいだろうか。
「淡白ってことはさ。回数が少ないの?それとも、早いの?」
「もー、智子、やめなってば!」
周りが、智子の持っているワイングラスを取り上げる。完全な絡みオヤジとかしているが、それでも嫌われないのだから、不思議だ。
「私はさ、最近受け入れ態勢が整わないんだよね」
ワインを強引に奪い返しながら、智子が言う。
「それって、できないってこと?」
夏樹が言葉を返したことで、周囲も耳をすませる。止めるからと言って、聞きたくないわけではないのだから、女は面倒くさい。
「濡れないんだよね、全然。好きなんだけどね」
照れくさそうに、しかし明らかにテンションはがっくりと落として言う。
「でも、あんまり結婚に興味ないし、彼氏もいるし、そこそこ楽しいんだけどね」
いつの間にか、幸の話は終わり、智子の不感症問題でテーブルが湧いた。
なんだかんだ励ましてくれるようで、みんなに今度はからかわれている智子に、夏樹は心の中でそっとお礼を言った。
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