第三話

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もし一緒に住んだら、家具の選択や配置まで、小島に任せようと心に刻んで家に上がる。 「おじゃましまーす」 入ってすぐの壁には、筆記体で書かれた英語の文章が額縁に入れられて飾られている。 ポスターのようで、絵画のようでもある。 聞けば、小島の叔母が、石田桃のファンである小島のために作ってくれたというのだ。 お風呂が沸かされていて、洗濯物は籠に入れてまとめられている。 至れり尽くせり。この家に来ると、いつもそう思う。 トイレ一つにしても、壁には小さなカレンダーが飾られ、インテリアとしての本まで並べられているのだ。 「ご飯、おにぎり二つくらいチンして食べられるー?」 洗面所で手を洗っていると、背後から声をかけられる。正直そんなスペースはない。 「結構フルコースがすごかったから、ひとつでいいかな」 すると、鍋をかき回していた小島が振り返り、また目を丸くする。 「な、何?」 「そうだよね。結婚式って、ご飯食べに行くようなものだもんね。お腹いっぱいだよね」 「え」 「忘れてた。すごくお腹減らしてくると思った」 「えー!」 心から驚いて、夏樹が叫ぶと、小島は鍋の火を止めた。 「ちょっと、ちょっと。ご飯待っててくれたんじゃない?」 「いやー、でもビール飲めば大丈夫だし」 「おにぎり、二つチンしよう。今、驚いたらお腹すいたよ」
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