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夏樹が笑いながら言うと、小島は照れくさそうに、しかし嬉しそうに微笑んだ。
子犬のようなあどけなさと、ネコのように落ち着いた動き。
ウサギのような繊細なイメージ。触れたら小島は壊れてしまいそうだが、一人暮らしをして立派に生きている以上、夏樹の数倍もたくましいはずだ。
ドレスを脱いで、小島の部屋着に着替えると、カレーは温まっていた。
「無理しなくていいからね」
実家で夏樹の作るカレーとはじゃがいもが三倍近く大きかったり、ナスやピーマンやトマトなどあらゆる野菜を詰め込んだとしか思えないカレーは、今まで食べたどこのカレーよりも美味しく、そういう小島の言葉と裏腹に、夏樹はおかわりまでして平らげた。
「今度は、何か一緒に作ろうよ」
夏樹が満腹のお腹を撫でながら、ベッドに寄りかかって言う。
テレビのチャンネルを変えながら、小島が頷いた。
「そうだね。あ、ありがとうございます」
お皿を片そうと立ちあがった夏樹に、小島の声が追いかけてくる。
泡だてて、食器を順番に洗い流していく。食器を乾かす籠がないので、シンクの上にさかさまにして並べていく。
すると、小島が来て、布巾を取り、食器の下に敷いた。
「いつもこうするんだ」
「あ、ありがとう」
主婦だな。心の中でつぶやいて笑う。
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