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「淡白なんだよね」
今日の披露宴で、智子たちに言った言葉にウソはない。
淡白であることは事実だ。だが、多少の語弊はあった。それは彼のメンツを保つ意味もあったが、夏樹自身のプライドを守るためでもあった。
そう、二人は、最後まで成し遂げたことがないのだ。
「なんでだろう。緊張しているのかな」
ある程度試し、お互いに疲れてしまって隣り合って横になる。
小島の右腕に自分の両腕を絡ませ、肩にキスをする。言葉に出来ないいくつかのお礼をこめて、少し強めに唇で吸う。
濃く赤いマークがそこに残ったことに満足して、小島から腕をほどく。
小さくため息がもれたが、それは疲れと眠気から出るあくびに近いものだった。
「ごめんね。情けないっす」
左を向くと、小島が苦笑いをして天井を見上げている。
テレビの灯りに映し出されたそれは、少しだけ寂しそうだ。
まるで心を読まれたようで、夏樹は眼をぎゅっとつぶった。
小島が慣れていないのは承知の上で、夏樹は完ぺきにできないからといって怒り狂うことはない。
心が乱れて、相手にぶつくさと文句をいうこともない。
まだ数回しか肌を重ねていないことが原因かもしれないが、調べ売るかぎりネットで探してみると、意外と男の人がナイーブだということ、焦らせては余計にうまくいかなくなることを学び、決して態度には出さないようにしていた。
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