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小島と付き合って季節が変わっていく。
冬が終わり、春が来た。
いつの間にかコートを着なくなり、上着を羽織らなくなっていく。
当然のように過ぎていく毎日が、とても意味のあることのように思え、心に安心感が沁み渡っていく。
決まった出来事は何もないけれど、何かが変わるとも思えなかった。
「えー、そんな簡単にうまくいくこともあるんだね」
久しぶりに会った真理恵は、夏樹の話を聞いて目を丸くしている。
お互いに仕事帰りの今日は、二人の中間地点をとったいつもと同じ場所だが、人でごった返しているのはいつものことだ。
すいていそうなイタリアンをみつけて入ると、なるほど料金が高めに設定されている。
だが、この前のようなうるさい環境で話せることでもないので、夏樹は真理恵におごるつもりでこの店を選んだ。
「いや、付き合えばっていう紹介だったんじゃないの?」
「そうだけどさぁ。小島君って彼氏が言うには積極的じゃないらしいから、そういう風にはならないかと思っていたよ」
「なにそれ」
店員に注文をして、メニュー表を渡す。
確かに、奥手かもしれないけれど、告白をしてくれたのも手を出してきたのもすべて先手を打ったのは小島だ。
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