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「そうでしょう? 王子様。私だけの王子様。だからねずっと、手を差し伸べていて」
『シンデレラ』(手を差し伸べる)
「はいっ」(手を上げる)
『シンデレラ』(手を差し伸べる)
「はいっ」(手を上げる)
『シンデレラ』(手を差し伸べる)
「はいっ」(手を上げる)
「はなさないで! ずっとずっと、一緒よ」
『君はとても変だね』
「――えっ?」
「突然暗転した世界に、たった一人残されて。わたしは、一人ぼっちになった」
「ちーん」
「大丈夫よ、魔法のステッキがあるもの。ビビデバビデブー」
『君はとても変だね』
「そう言った王子様の言葉が、いつまでも、耳元で響いてる。はなれない」
「私こんなに可愛いのに、どうして一人なの? 魔法だって使えるのに。歌だってうまいのに。お化粧だって得意なのよ。動物とだって、相撲が取れるくらい会話が出来るわ。ねえ、王子様」
「気付けば私は、目を閉じて、開いて。目を閉じて、開いて、目を閉じて、むーすーんーでー開いーて。てーをーうってーむうすんでえー! ただそれを、繰り返していたの。数百回、いいえ。数千回。数万回。数千ケイ。手を可愛く広げて」
「足は勿論内股よ」
「王子様、まだかしら。私こんなに待っているのに」
「干からびてしまうわ。ねえ、王子様」
『アリス! こんな所に居たのかっ!』
「あら。時計うさぎさん。あら、私、いつのまにか別の衣装になっていたのかしら。胸も小さくなってるし、髪もブロンドになっているわ。素敵ね。ああ、不思議ね」
「なんだかとりあえずお約束的に焦っている時計うさぎさんの後をついていった」
「こうして、私の、色んな大冒険は、はじまったのでした」
「ねえ時計うさぎさん! 私の王子様、まだかしら?」
END
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