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「おはよー」
「おう」
「あれ? 今日なんか静かだね」
「矢野と嶺川なら今日から香港」
「あっ、そっか」
俺との研修以来、それまでの引っ込み思案を克服した嶺川は、今ではしっかり自己主張ができるようになった。
毎朝オフィスで繰り広げられる矢野とのやり取りはまるで夫婦漫才のようで、すっかり営業部の恒例になっていた。
しっかり者の姉さん女房とダメ亭主、みたいな。
「あいつらいないと、ホント静かだな~」
「でも……、なんだか物足りないね」
そう言って、クスクス笑う紺野にこっそり視線を送る。
あれからも紺野は何も変わらない。普段通りだ。
ちょっと触れるくらいじゃ、何も変わらないか。
ただでさえ、にぶちんだしな。
菱田部長の言いぐさを思い出して、自然と笑みが溢れた。
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