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「だいたいこの件は俺の範疇外だって言ったろ?
新商品の開発は開発部の担当だ」
「だって祐がいいんだもの」
だめだ、話が通じない。俺は盛大にため息を吐いた。
ここ数ヵ月、何度となく繰り返された会話にますます苛立ちが募る。
ただ、彼女から持ちかけられた話は、これから本格的に全国展開をしようとしているうちの会社には好都合。
『頼むから、無碍にしないであげてよ?』
この件を相談した時、菱田部長か零した言葉が、また俺を我慢強くする。
「で、今日はまたどういったご用件で?
PB(プライベートブランド)用の商品なら、来週試作品が出来上がり次第お持ちするはずだったと思いますが」
俺の棘を含んだ言葉を気にする様子もない。
いつだって紗耶香は自信に満ち溢れていて、そのことが彼女を余計に美しく見せる。
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