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はー、とため息を吐く俺の様子を、安西がじっと窺っている。
同時に思い出したのは、俺がお茶を頼んだ時の、安西の視線……。
その先には紺野が……いた!
「安西さ……まさか、わざと?」
ふん、と安西は俺のことを鼻で笑う。
「どうでもいいけどさ、坂崎忘れてるよ? ネコ被るの」
「……!?」
「あの人のこと、私が応接室まで連れてったの」
俺は安西の顔をマジマジと覗き込んだ。
「坂崎のこと色々聞いてきて、うるさいったら!」
「……やっぱわざとかよ」
安西の勘のよさには、俺だって薄々気づいていた。
「あんだが悪いのよ、坂崎。
いつまでたっても、何もしようとしないから」
「なっ!?」
「ヘタレと鈍感にはにが~い薬が必要だと思って」
……返す言葉が、見つからねー。
「せいぜい頑張ってね~」
唖然とする俺を置いて、安西はオフィスへ戻って行った。
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