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朝のお茶を淹れるという香について、給湯室に入った。
手渡された緑茶の温度に、強張っていた心が溶けていくようだ。
「ふたばさぁ……、坂崎と何か揉めた?」
「うっ!?」
香のいきなり核心を突いた質問にお茶を吹き出しそうになった。
「ちょっと、ふたば。大丈夫!?」
「うん、大丈夫。でも、どうしてそのこと……?」
「ちっ、裏目に出たか」
「なに?」
「や、何でもない」
香は急須を流し台に置いて、私の方に振り返った。
「それで、ふたばは自覚したの?」
「へっ?」
「気づいたんでしょう? 自分の気持ち……」
「香……」
私の親友は、私自身よりも私のことをわかっていたらしい。
そのことに、何故だか安堵して、私は瞳に涙の膜を張る。
「うん……、自覚はした」
だけど……、私は自分の恋心に気づいた途端、自分でそれを手放した。
一度放った言葉は決して消えないし、坂崎を傷つけた事実も変えようがない。
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