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私の言葉にようやく我に返ったのか、坂崎は一言私に謝ると、何事も無かったかのように手を降ろした。
坂崎は相変わらずの無表情で、何を考えてるのかわからない。
お得意のニヤリ笑いを浮かべてもいない。
……いつもみたいに、私のことからかってるわけじゃないの?
心臓が、まだ大きく音を立てている。
私は、まだ坂崎の手のひらの感触が残る頬に、そっと自分の手のひらを重ねてみた。
……そう私、坂崎のぬくもりを心地いいと思ってた。
嫌いな奴なのに……、どうして?
そう思ったことに、私が一番戸惑っている。
動揺を掻き消すように、私は弾みをつけてベンチから立ち上がった。
もう一度、坂崎にきちんとお礼を言って、早くオフィスに戻ろう。
動揺していること、坂崎に気づかれたくない。
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