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「あの、なんか妙にリラックスしてません?」
各務さんはジョッキを口に当てたまま、目を見開いて私を見た。
「……そうかな?」
「はい」
敬語、飛んでるし。
各務さんは手を口元に当て、何か考え込んでいる。
「参ったな、けしかけるだけのつもりだったのに……」
「はい?」
「いや、こっちの話。
……で、俺は何から話せばいいの?」
今度は私の方がびっくりして、固まってしまった。
各務さん、『僕』から『俺』になってる。
「どうしたの、そんな顔して。
いいでしょ、今さら取り繕わなくても。
紺野さんの前だと俺も、いつの間にか素の自分に戻るんだよな」
「いつもは素じゃないんですか?」
「全然!!」
そう言って、各務さんはお通しに箸を伸ばす。
なんだか面白い人だな、この人。
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