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二次会に行っても、坂崎にはずっと安藤さんがまとわりついていて、私が話しかける隙なんてなかった。
「腹立つわ~、あの女。一体何者なのよ!」
「今日はもういいよ、香。折角だから二人で楽しもうよ」
「そうやって後回しにしてると、あとで後悔することになるんだからね!
……あ、電話だ」
ちょっと、ごめんね、と香は片手で私を拝んで、電話に出るために店の外へと出て行った。
いけない、と思っても視線はついつい坂崎を追ってしまう。
ちょっと前まではこんなこと考えられなかった。
坂崎はムカつく同僚で、社内で一番嫌いな奴で、どうにかして追い越したいライバルだったのに。
今の私はどうにか彼に目を合わせてもらいたくて、でもそうなるのが怖くて、賑やかなイタリアンレストランの隅っこで、ため息ばかりついている。
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