第1章

2/2
前へ
/11ページ
次へ
ワタシは『うらら』 現在、3つ年下の妹と両親の4人で『とある国』の遺跡に観光旅行に来ている。 この国には有名な遺跡が多く世界有数の観光地である。 夏休み前のこの時期、そんなに観光客は多くはないハズなのだが、有名な観光地のためか意外に人が多い。 ワタシは本来あまり人の多い場所は好きではないのだけれど両親から今回の旅行の話をされた時、何故かとてもこの場所に来てみたくなった。 懐かしい……それでいて悲しいような……。 ニューヨークが良い……とか、パリの方が……とか、あれこれ文句を言う妹の愛を説得(決して脅迫ではない)して、この旅行は実現した。 妹の愛は遺跡よりも近くの市で買い物をする方が良いと言って一人でさっさと行ってしまった。 本来、海外での日本人女性(とくに若い娘)の一人歩きはあまりオススメできないが……。 (まぁ、愛なら大丈夫だろうけど) 海外は慣れているし腕もたつ上に足もメチャクチャ速い。 (それよりも、やっぱり人の多い場所は苦手だ) 自分が来たいと思った場所なのに来てみれば何かしっくりこない。 そんな事を、あれこれ考えながら遺跡を見てまわっていたが人が多いせいか気分が悪くなってしまった。 人の少ない方へむかい歩いていると木が生い茂り、ちょっとした森のようになっている場所に出た。 何かに引き寄せられるように、その中へと入って行く。 暑い陽射しの下から木陰に移動すると、独特のひんやりとした空気に触れ肌から熱が引いていくのを感じる。 「涼しい」 ワタシはそう言うと更に奥へと歩いた。 まるで昔からよく知っている場所のように歩いてゆく。 しばらくすると少し広い場所に出た。 そこには、元は石造りの建物であっただろうと思われる残骸と、古い井戸らしきものと、小さな石碑のようなものがあった。 何か文字のようなものが掘られている。 薄くなっていて何が掘られていたのかはわからない。 その文字のようなものに触れてみる。 「……巫女アリー、ここに眠る……?」 知らないハズのこの国の言語。 見た事のないハズの文字。 薄くなっていて何が掘られているかもわからないのにワタシは石碑に掘られた文字を読みあげた。 不意に目の前が真っ白になっていく。 意識が後ろの方へ引っ張られるような感覚。 そのまま、ワタシは意識を手放した。
/11ページ

最初のコメントを投稿しよう!

9人が本棚に入れています
本棚に追加