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わたくしは『アリー』
この国の神殿に仕える巫女の一人。
幼い頃、両親を亡くし能力の高かったわたくしは神殿に入る事となったのだ。
それからずっと巫女として生きてきた。
辛い事もたくさんあったけれど、幼い頃の思い出が心の支えだったわ。
今では、神殿に支える巫女の中で最も優秀な者にしか任されない神聖で重要な役目を任されている。
その役目とは生け贄の心臓を取り出し神に祈りを捧げるというものだ。
生け贄となるのは、その多くは戦で捕らえた捕虜であったが、時には子供が捧げられる事もある。
神々には小人や子供が付き従っているとされているからだ。
今年も、わたくしが生け贄を捧げる役目を任された。
神官達の中にはわたくしではなく、もう1人の候補のユーリという巫女に任せようという声も多かったようだ。
結局はわたくしに決まった。
ユーリは何かというとわたくしに張り合ってくる。
どうやら、ライバル視されているらしい。
「あら? アリーさんじゃありませんこと?」
後ろから気取った口調で話しかけられた。
「あら? ユーリさん、どうかされましたか?」
わたくしは振り返り彼女に尋ねる。
彼女はクスクスと笑いながら答えた。
「ねぇ、アリーさんはご存じ? 今年の生け贄の少年の事」
彼女の言葉に少し引っ掛かりを覚える。
「少年? 今年の生け贄は捕虜ではないとゆう事?」
彼女はわたくしの質問に答える事もなく話を続けた。
「今年、生け贄に選ばれた少年はローズマリー村の出身ですってよ? ワタクシ達と同じ年だって神官達が話していましたわ。アリーさんのお知り合いじゃなくって?」
わたくしは驚いて彼女に聞き返す。
「本当にローズマリー村って言ってたんですか? 聞き間違いとかではないんですか?」
ローズマリー村でわたくし達と同じ年の少年は1人しかいない。
元々、小さな村。
わたくし達と同じ年の子供はわたくし以外では男の子が1人、女の子が3人だけ。
と、いう事は生け贄に選ばれた少年とは……イル。
「何を言ってるんですの? 他の何と聞き間違えるというのかしら?」
彼女の話し方はいつも以上に嫌味にあふれている。
「そうよね。聞き間違うなんて事はないですよね」
わたくしはそう言いながら僅かに俯く。
彼女はわたくしに近づくと耳元で囁いた。
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