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「その少年に生け贄の心臓を神に捧げる役目を任されたのがローズマリー村出身のアリーという巫女だと教えてさしあげたら、それはもう驚いていらしたわよ」
わたくしは彼女を思いきり睨み付ける。
「あら? 恐い顔ですこと」
彼女はクスクスと笑いながらわたくしの背後にまわり込んだ。
「一体何のつもりです?」
わたくしは彼女への怒りを精一杯押さえながら静かに問う。
「アリーさんたら、そんな顔も出来るんですのね? ワタクシはただ、アリーさんに役目を降りて欲しいだけですのよ」
彼女はわたくしのまわりをひとまわりして再びわたくしの正面に立った。
「何故です? それとさっきの話がどう繋がると?」
わたくしは彼女の考えがわからない。
「あら? アリーさんたら、そんな事もわからないんですの?」
彼女はそう言うともと来た方へ数歩歩いて立ち止まり顔だけこちらに向けて口元に人差し指をあてる。
「ワタクシでしたら自分の知り合いに生きたまま心臓を取り出すなんてマネは出来ないと思って、替わってさしあげようと思っただけですわ」
それだけ言うと彼女はそのまま神殿の奥へと姿を消した。
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