8/3 午後1時の鐘

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俺が所属しているサークルはミス研・・・ミステリー研究会だ。 しかしミス研とはいえ少し趣向の変わったサークルで、主に行っている活動は「完全犯罪のトリックの考察」である。 一般的に完全犯罪とは、犯行の露見、加害者・被害者の発見、証拠の出現、法的制裁、加害者の捕獲のうち、一部または全てが不可能な場合に完全犯罪となる。 加害者が捕獲できなければ時効となり、法的制裁が不可能であれば冤罪または無罪となる。 証拠や加害者、被害者が見つからなければ立件はできず、犯行が見つからなければ事件にすらできない。 では実際にどのような条件であればそれが可能なのか・・・というのを考察するといった活動を行っていた。 お陰で学校内では「犯罪者予備軍」や、「暗部育成サークル」などと言われているが、サークルの大前提があくまでも「考察のみ」である以上、実行に移す気など毛頭にないだろう。 ましてや、未だに誰一人として「完全犯罪」を行えていないのだ。 実行なんて出来るわけがなかった。 「・・・というのを考えてみたのですがどうでしょうか、北川先輩?」 「ん?すまん、聞いてなかった。」 「はぁ・・・ほのちゃん先輩、なんでこの人はこうも・・・」 二人が呆れた目で此方を見つめる。 俺は直ぐ様謝罪を述べ、杏子の話に耳を傾けることにした。 「ですから・・・犯行の露見は絶対条件だと考えてのトリックなんですが、いいです? 今回は殺人で考えてみました。 犯人は2人。殺害方法は事故に見せかけた形で、場所は屋上。 前日に屋上の手すりをゆるめておき、翌日に相方が標的を呼び出す。その後、目的の位置で話し込んで・・・」 「はいストップ。 前日の仕込みの時点で目撃情報がでる。 そこから交友関係を割り出せば二人共捕まるぞ。」 的確な指摘に杏子が肩を落とす。 無理もない。必死に考えての発言だったであろう。 しかしそのような必死さすらも無意味な程に完全犯罪とは難しい。 それこそ究極の美学と言える位に。
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