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なので、タミルとナキは、隣町まで行ったことがあるのだ。
そんな説明を、タミルから受けた少年は、あることを聞く。
「それじゃ、ナキ君のお父さんが、その”こものや”っていうのをやってるの?」
「うん、そういうことかな……」
これには、ナキが答えた。
そんなことをしている間に、五人は馬車乗り場に着いた。
ちょうど馬車も出発するところで、五人は急いで乗り込んだ。
「ふぅ、あぶなかったね」
「全く、アランがもうちょい早かったら、あせらなくてもよかったのに」
「ごめんね!」
その時、馬車は動き出した。
唐突な揺れを受け、少年は席から落ちそうになった。
「大丈夫……?」
「うん、ありがとう、ナキ君」
ナキに支えてもらいながら、席に深く着くと、少年は馬車の外を見た。
「うわぁ……」
そこには、少年が夢で見たような草原が広がり、蝶や鳥が気持ち良さそうに飛んでいた。
「白いちょうちょもいるのかな……」
「白いちょうちょ?」
「ゆめで見たんだ。すごくきれいだった」
「へぇ」
少年は右へ左へ行き、流れていく外の景色をしっかりと見ていた。
白い蝶々を見つけたら、目を離さないように。
「アラン、もうすぐつくぞ」
「え、もうつくの?」
「となりだからすぐだよ」
「そうなんだっ!」
少年は席に座り直し、馬車が止まるのを待った。
その時、少年の目の端に白いものが写った。
それは窓から見えているようで、少年は窓の方に目を向ける。
「あ……」
そこに飛んでいたのは、白い蝶々だった。
他の白い蝶とは違う。
夢で見た、世界でただ一匹の白い蝶々がそこにいたのだ。
「ねぇ!いたよ、白い蝶々!」
そう言われ、他の四人は窓に目を向ける。
しかし、そこには白い蝶々はおらず、雲だけが流れていた。
「いないじゃん」
「ほんとうに見たの……?」
「うん、見たはずなんだけど……」
そうすると、馬車は止まった。
どうやら着いたらしく、外には家が幾つか建っていた。
「よし、降りるぞ!」
五人は馬車から降り、タミルの兄とナキの父親がやっている小物屋を目指す。
少年は、おかしいなぁ、と思いながらも、四人のあとを追って行った。
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