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「なんだったんだろ、さっきの……」
ユミはマナにくっつきながら聞く。
「さぁ、モンスターかもな」
しかし、タミルは恐がる様子もなく、どんどん先へと進んでいった。
実際、この世界にはモンスターが存在する。
しかし、人や家畜を襲うことはなく、洞窟や深い森などで穏やかに生活しているらしい。
「それにしても真っ暗だねぇ」
少年は、鞄にはずっと入っていた懐中電灯を点ける。
「なんだ、持って来てたんだ」
「昔から入ってるんだ」
「へぇ~。あ、そういえば聞くのわすれてた!」
「え?なんのこと?」
「ほら、分かんなかったものを聞くの」
「あ、ほんとうだ!それじゃ、出てから聞きに行こう」
「そうだな!」
その後も、五人はどんどん進んでいく。
途中、ユミやナキが、戻った方がいい、と言ったが、タミルは大丈夫と言って先に進んだ。
といっても、ここまで幾つかの分かれ道があり、更に下り坂になっていたため、五人はどんどん奥に進んでいくことになっていた。
そして、ある時。
「ねぇ、かえり道は分かるの?」
と、マナが聞いたのが、始まりだった。
その時、タミルは自信満々に、
「だいじょうぶだって!分かれ道とかあったけど、上がって行けばすぐもどれるって!」
しかし、現実は甘くなかった。
なぜこの洞窟の前に、”危険”と書かれた看板があったか。
この洞窟は一度入って進んでしまうと、戻れないといわれているからだ。
タミルが言ったように、上がって行けばいいというが、実際、五人が試してみると、
「ねぇ、こんなに長かったっけ?」
「あれ?おかしいな、もう着いてもいいはずなのに」
そう、まるで魔法でもかかったかのように、上がっても上がっても出れないのだ。
そしてついに、ユミが泣き出す。
「うわぁぁぁぁん、かえれなくなっちゃったぁ。かえりたいよぉ、お母さぁぁん」
涙は我慢していたかのように、一気に溢れ出て、ユミの服を濡らしていった。
ナキも、もうすぐ泣きそうであり、だんだんと空気が重くなっていった。
「ねぇ、どうしよう……」
少年が、タミルに聞く。
「うーん、上がるしかない!」
「でも…………」
そう、今まで結構上がって来たはずなのだ。
それなのにたどり着けない。
しかし、動かないというのはタミルが一番嫌だった。
「とりあえず、動こうぜ!」
やめとこう、と少年が言おうとした時、少年の耳に声が聞こえた。
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