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「え……?」
「どうかしたのか?」
「いや、こえがしたような……」
「こえ?そんなの聞こえなかったぞ」
少年は気のせいかと思った時、またしても耳に声が聞こえた。
それはさっきよりもはっきりと。
「ねぇ、みんな何か言った?」
「いや、何も言ってないぜ」
他の三人も首を振る。
少年はさらに耳を澄ます。
「あ……」
そして少年は、声を聞き取った。
『こっちよ……』
「やっぱり……だれ?」
『それは後。今はここから出なくちゃ』
「うん……」
すると少年は、姿が見えないが、声が聞こえる方に歩いていった。
「お、おい!アラン!」
他の四人は驚いて、少年の後を追う。
「どうしたんだよ?」
「しっ!静かにしてて……」
そう言われ、四人は黙って少年についていくことに。
しかし、少年は上がったり下がったりするので、四人は心配になってきた。
「おい、アラン……」
「大丈夫だから……」
そう言われ、四人は信じることにした。
なぜなら少年の目がしっかり前を向いていたからだ。
『次はこっち。これで最後よ』
「うん……」
その声のする方へ行くと、前には光が見えた。
それは懐中電灯のそれとは違い、温もりのある、日の光だった。
五人は急いでそこに向かう。
そして、ついに洞窟から出ることが出来た。
「やっと出れた~」
「うぅ、怖かったぁ」
「アラン、すごかったね。どうやって分かったの?」
「こえがしたんだ」
「こえ?」
その時、少年の目の前に、白い蝶々が一匹飛んでいた。
まさにそれは夢の中、そして馬車の外で見たものだった。
「もしかして、君が……?」
その白い蝶々は、少年の前で返事をするかのように何回か飛んだあと、何処かへ飛んでいってしまった。
「…………ありがとう」
少年は飛んでいった白い蝶々にお礼を言うと、四人に戻ろうと言った。
小物屋に戻ると、少年はさっきのことを話した。
もちろん怒られたが、意味が分からなかったこともあり、何より無事だったことに二人はホッとした。
二人に声のこと、白い蝶々のことを話すと、笑いながら、しかしその笑いは馬鹿にしているものではなく、楽しそうに「それはきっと神様だな」と言って、神様に感謝の言葉を贈った。
マリサナに帰って、みんなと別れた後、家に戻っても、少年は今日あったことを母親に話し、また会いたいと言ったのだった。
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