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窓の外では、さっきの鳥が餌を探すように歩いている。
御堂「そういえば、肩甲骨は、人間が天使だった頃の名残って……」
遠藤「ロマンチックだけど、それも嘘よ。もし人間に羽が生えていたなら、代わりに腕がなかったはずだから」
佐神と御堂、自分の両手を見つめる。
遠藤「手がなければ脳が発達しない。脳が発達しなかったら文明を作れない。飛べるなら足は最低限でいいし、手を使わずに物を食べるなら嘴が欲しい。空気抵抗を考えると胴体の形も……。要するに、突き詰めると、鳥の形になってしまうわ」
佐神「あの、遠藤さん。今日はどうしちゃったんですか?」
佐神は問うが、それを無視して遠藤は、御堂に近づく。
遠藤「あなた、今の自分が不自由だと思っている?」
御堂「不自由、ですか? 別に私は……(目を逸らす)少し思ってるかも」
この時、二人は、佐神の記憶喪失の事を考えている。
遠藤「空にあこがれるのは、自分が不自由だと考えている人にありがちな傾向よ」
御堂「そうなんですか?」
遠藤「ううん。嘘」
遠藤は笑う。
窓の外の鳥は飛び立ち、夕暮れの空に消えていく。
遠藤「でもね。空を飛ぶのだって、私達が勝手に思っているほど自由じゃないはずよ。空は飛べる。けれどそれ以外は何もできない。それが鳥と言う生き物」
3敵の出現。
一番星が見える時刻。
空から、タワーのような形をした敵が落ちてくる。地上寸前で停止、空中浮遊しながら両手と両足を展開して仁王立ち。
敵は特に行動を起こさず大通りに突っ立っている。
周囲の人々は慌てて避難を始める。
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