「不思議人」

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初めて交わした言葉は今でも鮮明に覚えている。 場所は、会社の喫煙所。 「あのー、火、貸してくれませんか?」 くわえタバコで言われた。 「どうぞ」 僕はポケットからライターを取り出すと火を付けた。 一息吸って、深く吐き出すと、ソイツは言った。 「借りたモノは倍にして返す主義なんで、安心して下さいね」 いや、先ずは『ありがとうございます』だろ、なんて突っ込むことも出来ず、にこやかに微笑んでいるソイツを白い目で見てしまう。 『変わった奴』 それが僕の、第一印象。 「運転なんて出来なくてもいいじゃん!」 何故か、会社からの命令で運転免許を取りに行くはめになったソイツが、何故か、僕の部屋で、教習所の教科書を広げながらぼやいた。 「まぁ、無い方が交通事故が減って、お巡りさんは大助かりだろうな。 その分、僕らは江戸時代にタイムスリップだけどな」 僕はソファーに1人で腰掛けながら見ていた雑誌をテーブルに置いた。 「へっ?ストリップ?」 「・・・・スリップだ」 違いが分からないのか、キョトンとしているソイツを置いておいて、僕は冷蔵庫からお茶を取り出した。 「あぁ、いいなぁ、俺も欲しいなぁ」 羨ましそうに見てくるから、 仕方なくコップを差し出した。
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