1人が本棚に入れています
本棚に追加
「そういやぁさ、この道路標識なんだけどさ」
みてみてっ、とソイツがそう言うのを僕は無視し、テレビをつけた。
だって、僕の貴重な休日が、突然やって来たコイツのせいで既に台無しなのだから。
コイツの評判は昔から社内で有名だった。
よく女性社員たちが噂をしている男に間違いない、と思う。
『やっぱ、イケメンだよね』
『でも、ね。あれだけ不思議キャラだと引くよね、ヤッパリ天は二物を与えず、なんだね』
給湯質で話をしていたのをたまたま耳にしてしまったのだ。
イケメン、不思議キャラ、と目の前のソイツに見事に当てはまる。
「はぁ、僕も少しは格好よかったら人生変わってたかも・・・・」
自分とソイツを比較して、落ち込む。
「ねぇ、ねぇ、ねぇ、」
「っ、ダァァ、煩い!僕は今考え事してたんだよ!」
だから、邪魔するな!と、言いたかった。
が、ソイツが手に持っていたはずの教習所の道路標識欄が視界をおおった。
ぐいっと近付けさせられて、逆に文字が見えない。
「だから!」
「だからは、こっちの台詞だから、ねぇ、これ見てよ」
教科書を奪い取り、確認する。
ソイツが示した標識は、道路の歩行者通路にある、大人と少女と自転車らしきものが青地に白で描かれていたものだった。
最初のコメントを投稿しよう!