「不思議人」

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「で、これが何?」 「だって、怖いよ、それ」 「はぁ?」 「だって、その看板って、『オジサンが小さい女の子を自転車で誘拐する可能性あり』っていう標識でしょ?」 言われて見れば、そう見えなくもない・・・・って、違うだろ。 「明らかに違うだろ。これは、この歩道は歩行者と自転車が通ってもいいですよ、って事を分かりやすく描いてるだけだろ。ちゃんと下の説明が記してあるからわかるだろ」 今度は逆に僕が、ソイツに教科書を渡した。 「うっそぉ~?」 何故、疑う? 何故、驚く? これは、常識だろ? 「まぁ、いいや、俺は教科書なんて信じない派だから関係ないけどね~」 何だそれ。 派閥があんのか? 僕の貴重な時間が。 イケメンの癖に。 「あぁ、メンドクサイ。運転なんて出来なくてもいいじゃん」 そう言ってまた、ソイツはさっきの話を無かった事にした。 もう、いいから、貴重な時間を返せ。 いや、無理だ。コイツには何を言っても無駄だった。と、短い付き合いながら、学んだ。 僕は項垂れると、深く溜め息をついた。 何となくテレビをみる。 テレビのアナウンサーが、昼の12時になった事をつげた。 「飯、行こうよ」 ソイツが教科書を床に投げ捨てた。
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