第2章・爪を隠した民警

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人類がモノリスに立てこもり10年の月日が経った。 俺は一年前に民警のライセンスを修得して同期で仲の良かった里見連太郎の紹介で天童民間警備会社に就職し親元を離れてマンションの部屋を借りて過ごしていた。 「司斗さん、司斗さん」 ござを敷いた居間に寝転がり寝息を立てていると体が揺すられて起こされる。 薄く目を開けるとショートヘアーの銀髪をした少女の顔が目に入る。 俺の相棒兼妹、イニシエーターの渡瀬友伊(ユイ)だ。見るとヒマワリのワンポイントのあるエプロンをしている。 「どうした、友伊?」 「煮付け料理をするのにお醤油が足りません」 「え……?今日買ってなかったか醤油」 「あれお醤油じゃなくてめんつゆでした。危うく入れかけました」 マジかっ!!醤油とめんつゆ間違えるなんてマヌケすぎんだろ俺! あくびをかみ殺し財布がポケットにあることを確認して立ち上がる。 「醤油買ってくるよ、一人でいれるな?」 「はい!お留守番は任せてください」 友伊の頭を撫でてやり部屋から出る。 数キロ先の海から吹いてくる潮風が心地よい。少し長めの黒髪をなびかせながら近所のスーパーに向かう。 その道中立ち止まり遠くに見える黒い壁、モノリスを眺める。 あいつらと将来について話してから3年。俺は生き残り民警となって……… あの頃とは大きく変わっていた。
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