雲雀は謳う

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旦那様のご命令で、彼女は徹底的に磨かれました。 大勢の使用人の手に掛かり、風呂で全身を隈無く清められ、香油を塗り込まれました。 白くなった肌に、コルセットがきつくあてがわれました。 絹のドレス、大きな宝石のついた首飾り、両の手にも足首にも同じく宝石。 それは、まるで重い重い鉄の枷のようでした。 「ご主人様。これでは、十分に声が出せません。」 彼女の嘆きは当然のことです。 「それでいいのだよ、私の金糸雀。君の声は、何も遮るもののない外で歌っていた時とは変えてもらわなければ。私のサロンで私のチェンバロに合わせてもらわなければ。いいね、私の金糸雀。」 それが、彼女が雇われた条件なのです。 ですから、彼女も納得いたしました。 「わかりました、ご主人様。」 その返事に、旦那様はいたくご満足されておいででした。
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