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「さて。」
旦那様は、私を振り返りました。
「何故彼女を逃がしたのかね。公正にお前も罰せねばならん。彼女を愛したのなら、言ってくれればよかったのに。」
ああ、旦那様は、彼女の時にはお流しにならなかった涙を、私のために流してくださる。
いいえ、旦那様、私は彼女を愛してはおりませんでした。
ですが、旦那様に彼女を誤って引き合わせましたのは私の罪。
ですから、どうぞ私めを罰してくださいませ。
「どうか理由を教えておくれ。長年私を支えてくれたお前を、私は何故失わなければならないのだ。」
お優しい旦那様。
親子ほども歳の違う私めは、もはや老いぼれでございますのに、常に頼りにしてくださいました。
そんな大恩ある旦那様のお力になるべく探し出してきた彼女は、旦那様の求める金糸雀ではございませんでした。
過ちを犯した私は、旦那様にも、彼女にも、詫びなければなりません。
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