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再び瞼を開けると、そこは、見慣れた色のある天井だった。
天井に向けて伸ばされていた手をぎゅっと握って空を掴む。
握り拳をそのまま額に持ってくる。
……銀星
ぎゅっと瞳をとじ、心の中で彼の名前を呼ぶ。
冷や汗が頬を伝い、枕の染みを広げていった。
深く息を吸って、吐き出す。その動作を幾度か繰り返し、荒くなった息を整えた。
漸く整った息で最後に一度だけ深く息を吸い込む。ため息と共に吐き出した。
「そろそろ、起きるか」
誰に言うでもなく呟いて体を起こす。
ベッドから降り、キッチンへと向かった。冷蔵庫を開ける。
何か入っているだろう。そう甘く考えていた自分が悪かった。
冷蔵庫の中は見事にからっぽで食料らしい食料は入っていない。
当然、朝食になるようなものなど、影すらなかった。
「……」
パタン。
静かに冷蔵庫の扉を閉め、立ち上がる。
机の上に置いていた財布を片手に、まだそう日は高くない外へと歩みを進めた。
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