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外に出れば、身を刺すような冷気が体を包む。
はぁ。と息を吐けば、白い煙が空気中に散った。
……そう言えば、あの日もこんな、雪のチラつく日だった。
――だから、あんな夢を見たのか。
ポツリ、心の中で呟く。
自分は、あの日のことを忘れてはいけないのだ。傷にしなければいけない。
そんなことを考えながら石畳で作られた道をコツコツとブーツを鳴らして歩いていると……
「……霧?」
いつの間にか、周囲は白い霧で包まれていて一寸先も見えない。
氷タイプ……あるいは、ゴーストタイプか……
自然現象ではないだろう。
微かに、殺気を感じる。
しかし、この妙な感覚は何だ。
殺気は確かに感じるが、刺すような、殺気ではない。むしろ……――
「―――っ」
「!?」
身構え、イヤリングに手をあてていると
突然目の前に人影が現れる。
その影は、銀狼に気付かず、まっすぐとぶつかってくる。
あまりに突然のことで対処が遅れた銀狼は、その人影にぶつかり、倒れてしまった。
「……な、なんだ。おい、お前」
「……」
返事はない。
いつの間にか、霧は晴れ、ちらちらと降る雪が視界に確認できる。
「おい」
銀狼は自分の上に覆いかぶさって倒れている人影を押し、身を起こして問いかける。
しかし、どうやら気を失っているらしい。
聞こえてくるのは、少し荒い息の音だけだ。
自分の手の中にいる人物は、綺麗な青の混じった銀髪をもった、とても髪の長い少年だった。
歳は多分、自分と同じくらいだろう。
「銀髪に、長髪……それに、この姿」
あいつを思い出す。
「……」
はぁ。と一度深いため息を漏らす。
銀狼は自分の手の内で気を失っている少年を抱き上げた。
――どうやら、買い物はしばらく後になりそうだ。
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