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ガチャリと音を立てて寝室の扉を両手に持っている紅茶がこぼれないように気をつけながら肩で押し開ける。
部屋に入って室内を見渡せば、先刻まで眠っていた少年が上半身を起こし、窓の外を眺めている姿が見えた。
ふと、彼の手元に目をやれば布団を握り締めた手がわずかに震えている。
「窓の外に、何かあるのか?」
近くにあるテーブルの上に淹れてきた紅茶の入ったカップを置く。
窓の外から、未だに目をそらさず銀狼が入ってきたことにすら気付いていないだろう彼に問いかける。
「……」
そんな銀狼の言葉にも応えず、いや、それ以前に言葉すら耳に届いていないのかもしれない。
一切反応を示さない彼に銀狼は近づいた。
「おい」
声をかけながら肩に触れた。その瞬間。
「―――……っ」
少年が振り返り、同時にパシン、と乾いた音が部屋に響く。
漸く合わされた彼の瞳は、酷くおびえているように見えた。
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