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「あ……雄介君」
キッチンに秀美がいる。
「あぁ……」
生返事を返しながら雄介がコンロを見る。
そこにはメラメラと燃えるガスの火と、その火に炙られる、鍋やフライパン等の様々なキッチン用品があった。
ひとみの案らしい。
厚司が襲われている最中にひとみがいなくなったのはこの為だったのだ。
ひとみ曰く『ただ殴るより効きそうだと思った』。
確かに、あそこで普通に冷めたフライパンで殴りかかっていたとしたら、今頃そのまま返り討ちにあっていただろう。
「えっと………これとこれ……かな」
「え?」
雄介が秀美から、たっぷりと熱を吸収し、白い煙が上がっている小鍋を渡される。
「いくら火で焼いてもすぐ温度下がっちゃうから。これ二人に届けてきて貰える?」
「あ、あぁ……うん」
雄介が火傷しない様に気を付けて受け取る。
「カセットコンロとかあれば楽なのにね。向こうで用意できるから」
「そうだな」
雄介がキッチンを出る。
チラリと後ろを振り向くと、また新しい鍋を火にかけている秀美が見えた。
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