願うは、キミの幸せ

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しばらく動けなくて、シートに体を預けたまま目を閉じていると、不意に響いた窓を叩く音。 条件反射で窓の外を見ると、俺の心を和ませてくれる微笑み。 窓を開けると、その癒しは近くなった。 「美也、何でここにいんの?」 「ちょっと用があって帰ってきてたんだ」 美也の家は香子の隣で、俺の大学時代の下宿先。 今は香子の弟、慶太と結婚して家を出ていた。 「カーテン閉めようと思ったら見覚えのある車が見えたから、もしかしたらと思って。香子さんに用だったの?」 「あ、いや……べつに」 美也は答えを濁す俺に首を傾げながらも、その笑顔は消さずにいてくれる。 「あ、そうだ。亨ちゃん、晩ごはんまだだよね?」 「あ、あぁ。今、帰りだからな」 「じゃあ、うちで食べていかない?丁度、今からなんだ」 どうせ家に返っても辛気くさいことばっかり考えてしまうことが確実だった俺は彼女の誘いにあっさりと乗ろうかと思った。 ただ1つだけ懸念事項を確認してから。 「あいつもいんの?」 「あいつ……?あぁっ、今日は宿直だからいないよ」 こんな時に慶太の憎まれ口に付き合うのは勘弁だった。
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