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日が暮れて校舎から帰宅を促す音楽が流れる頃には、ボールを追いかけていた俺たちは汗だくになって服を濡らしていた。
「あっつ」
腕で顔の汗を拭う壱琉の髪からは水滴が滴り落ちる。
「まだ、宿題残ってんだって。面倒くさいよなぁ」
「俺も」
「えっ?2人ともまだやってないの?」
「は?忍、もうやって来たの?」
ティシャツの首回りで汗を拭いていた俺は忍の驚きの声に驚いた。
「やったよ。遊びに行く前に」
さも俺たちの方がおかしいとでも言いたげな涼しい顔。
「忍んち学校から1番近いしズルいよな」
「壱琉もそんなに変わんないじゃん。やる気の問題だよ」
「ほっとけ」
正論をかざされて不貞腐れた壱琉はささっと歩き出してしまった。
「ほんと、壱琉は子供だよね」
小学2年生の、しかも同級生に子供扱いされた壱琉の歩みは次第に速まって、そのすぐ後ろをクスクス笑いながらついて行く忍。
そんな2人を俺は自分のペースで追いかけた。
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