あの日、君に恋をした

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「あっ」 誰かが上げた声に全員が反応した。 視線の先には薄暗い街灯に照らされた香子と慶太の姿。 あまりの驚きに動けずにいる俺たちを他所に淡々と歩いてくる2人。 「ただいまー」 場に似つかわしくない慶太の声が、日の落ちた暗闇に映える。 「慶太っ。お前、こんな時間までどこ行ってたんだっ」 慶太はどうして自分が怒られているのか分からない様子で父親の顔を見上げている。 「山口さんとこのツトムと遊んでた」 香子の抑揚の無い声が横から入ってきた。 山口さんちのツトムは、あの公園の近くの団地で飼われている毛むくじゃらの雑種犬で、特異な外見と人懐っこい性格で子供たちの人気者だった。 「山口さん留守にしてたから慶太がいるの気づかなかったんだって」 香子は友達の家から帰ってくる途中で、慶太を探していた母親に出会って事情を聞いてから真っ先に思い浮かんだ山口さんの家へと1人向かい、ここにいる人間の誰1人として見つけられなかった慶太をあっさりと連れて帰ってきた。
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